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人生の分岐点、今にして振り返ると、なんとも不思議な偶然の出会いだった。小説とブラックコーヒーと私。
その後の30年弱、どれだけの時間を小説とコーヒーに使ってきたことか(笑)
小学生時代の中村少年、一応宿題はやってました。そんな宿題の中で最も苦手だったのが読書感想文なるもの。本を読むこと事体好きではない上に、課題図書って本当につまらなくて最後まで読めなかった。いつも途中まで読んで感想を書いて提出するのだけど、原稿用紙が戻ってくると、いつも赤字で大量に修正されていたし、本当に嫌で嫌でしょうがなかったのです。
そんな僕が、なぜか趣味が読書になってしまいました、自分でも驚きです(笑)
読書と出会ったのは高校2年生の秋、11月頃だったと思います。10月にバレーボールの試合中、左ひざの靭帯2本と半月板を全壊してしまい、長期の入院をすることになってしまいました。
手術後の3週間余りは完全にベットに固定されてしまい、医療関係者以外の人間と接触しない生活が続いたのですが、入院1か月後辺りから4人部屋に移りました。
山口市では大きめの病院だったのですが、大半の患者は年寄りばかり。高校生は僕しかいないような状況でしたから、当然同部屋のメンバーもおじさん~おじいさんばかり。当時の僕は、ちょっと人生の目標を見失っていて茫然自失気味だったので、誰とも話さずに引きこもっていました。
すると同部屋の1人の初老のおじさんが1日中ちょっかいを出してくるようになりました。Aさんは明るくて声の大きな面白い方でしたが、僕としては明るい気分ではないのです。初めは正直なところ面倒な人だと思って最低限度の接触だったのですが、Aさんのアプローチは非常に強引で1日中あれこれやと世話を焼かれて、結局Aさんのペースに巻き込まれていきます^^;早起きのAさんは目が覚めると、対面で寝ている僕の足の裏めがけて輪ゴムを飛ばして起こそうとするんですよ!なんってオヤジだよ!!
そんなある日、突然何冊かの小説を持ってきて 「暇なら本読んだらどうだ?《青春の門》は絶対面白いから!」 という訳で、僕は小説と出会ってしまったわけなのです(・∀・)
まあ暇なのは事実でしたし、あまりにもしつこく薦めてくるので取りあえず読んでみることに。そんな時にちょっと気付いたのです、本を読んでいる時はAさんはちょっかいを出してこないという事に!(笑)
それもあって(失礼)その日から小説を読むことが日課になりました。読み始めると、これが本当に面白い。あれ?本って面白くないものだと思っていたのになぁ、不思議です。毎日小説を読み漁る日々が何週間も続きます。すると不思議な現象が起きる様になりました。
朝起きると、知らない小説がベットの横に何冊も置かれているのです。Aさんに聞いても知らないというし。。。だれ?
そんなある日、全く知らない若い看護婦さんが僕のベットのところに来て、明るく一言♪ 「この前の本どうだった~?感想聞かせて~♪」 あぁ、そういう事だったのか!本を置いて行ってくれたのは看護師さん達だった様です。毎日ずっと本を読んでる子がいるから、気に入った本を持って行ってあげよう!という話になったのだそうで、いろんなジャンルの本が置かれていたのにも納得(笑)
どうやらその病院には付属の看護学校がある様で、そこの生徒さん達だったのかな?多分僕とあまり年が離れていないような若い方が4・5人ちょくちょく病室に遊びに来てくれるようになり、本を大量に貸してもらえる様になりました。この時に栗本薫・田中芳樹・夢枕獏・岡嶋二人・エラリークィーン・アガサクリスティーなどが含まれていました、その後どれだけの時間を使うことになるのか、この時の僕は知らないのですけどね(笑)
Aさんも、若い看護師さんたちが部屋に来るようになって楽しいようでした、趣味の読書の話できますしね(・∀・)そんなAさんは病院の近くに住んでいるようで、奥様が朝昼晩の3回、必ずブラックコーヒーを魔法瓶に入れて持ってきてくれていました。僕はコーヒーを飲む習慣がなかったのですが、何故だか当然のように毎日僕の分のコーヒーもありました(笑)Aさんの奥様が淹れたコーヒーが本当に美味しかったので、退院後もブラックコーヒーを飲むようになり、そして今では喫茶店のマスターになってしまったという仰天エピソードです(笑)
怪我をしてスポーツを諦めなくてはいけなくなり、ぽっかり心に穴が開いてしまって人生に迷っている時でした。そんな心の隙間を埋めてくれたのは小説とブラックコーヒーと周りにいた方々の笑顔でした。
退院後もAさんとは15年ほど親交があり、仲良くしていただきました。Aさんご夫婦にはお子さんがおられなかったので、帰郷する度に、実の息子のように接してもらえました。数年前にお2人とも他界されたと連絡がありました。
Aさん、僕はまだあの頃と同じように、小説を読みながら、毎日美味しいコーヒーを作っていますよ。
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2018年2月13日 07:00
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